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ブラウザと小説の新しい関係を模索する

出版界にも海賊版の波が、という話し

 ニューヨークタイムズが書籍の海賊版に関して、こんな記事を書いています。

 Scribdは、電子書籍版のYouTubeみたいなサイトですが、結構な数の本が、作者に断りもなくアップロードされているのだそうです。去年などは5倍も増えたのだとか。

 サイト側もフィルタリングシステムを開発したりするなどして、頑張って削除しているようですが、大方の予想通りイタチごっこになっている模様。

 面白かったのは、スティーブン・キングなどが、海賊版の取り締まりに関して否定的なコメントを寄せていることですね。対費用効果を考えると、追跡するコストが割に合わないから、という尤もなコメントです。

 シナリオライターのハーラン・エリソンさんは「損害を補償してくれたらいい。別にそれで金持ちになりたいわけじゃないけど、払うべきものは払えということだ」と主張。この人は、9年前には、ニュースグループに自身の著作権を侵害するコンテンツを投稿され、それを差し止められなかったプロバイダーに訴訟を起こしています。

 Cory Doctorowさん(SF作家であり、あのBoingBoingのスタッフでもある)などは、それとは正反対の態度で、自分の本を出版すると同時に、ネットに無料の電子書籍も公開するのだそうです。

 レッシグが言及したことですが、情報化社会の本質は「人々の関心」を奪い合う社会なので、より多くの関心を奪ったものが、それに見合った「別の」経済的利益を得る機会を獲得するようになるはずで、その意味において僕はCory Doctorowさんの姿勢を先進的だと感じます。

 確かに、著作権が侵害されるのはむかつくことかもしれないけれども、だからといってどうすることも出来ないのなら、根こそぎ発想を変えるしかないわけですからね……

 その際は、ケヴィン・ケリーが提示するような新しい価値観が重要な意味を帯びてくるのでしょう。