先日は読者数の推移をグラフにしてみたわけですが、困ったことにどの作品も単調に減っていくので、そのまま見ていたらあまり特徴が見えてこない。
そういうときはデータの変化量を見ます。
先日の「人間失格」では、読者数の推移はこんな感じです。
読書位置が先に進むに連れて読者が減っていく。当たり前ですね。
ではこのグラフを、各区間の読者の減少率で見てみましょう。専門的には先のグラフの一階の微分です。
こんな感じで、徐々に減少率が少なく(ゼロに近く)なっていくのが見て取れます。半分あたりを過ぎてからはほぼ横ばいですね。
半分以上を読んだら続きが気になって最後まで読んでしまうってことですかね。概ね予想通りです。
ところで、このグラフの最高値は常に0です。
0とはどういう意味か?
これは減少率がゼロということですから、「読者が減少しない」って意味です。つまり、読者がその区間で全く作品を離れないということですから、作者からしてみれば最も望ましい状態になります。逆に、マイナス方向にでかい区間は、そこで読者を失った割合がでかいっていうことです。
この変化率のグラフの面白いところは、読者数の推移のグラフと違い、どの作品も似たようなカーブになるとは限らないところです。
例えば太宰治の別の作品で「二十世紀旗手」という作品で見てみたら…
こんな感じで、いくつかの山と谷があることが見て取れます。
0%〜15%、30%〜45%は読者をあまり失っていませんが、15%〜30%、45%〜60%では大きく読者を失っています。つまり、この区間は読者の集中力とは別のファクター、すなわち作品の内容に何かしら原因があるかもしれないってことです。
ただし、この変化率とて一般的には右肩上がりになるのが普通で、大概は最初のケースに合致します。そういう場合、さらに特徴を「搾り出す」には、更に一階の微分をとって「減少率の変化率」を見るのが良いような気がしますが、それはいずれまた。
あとこのグラフですが、意外と作者ではなく読者にも役に立つような気がしています。
良く名作なんかを紹介されるとき、どの山を越えたら面白くなるか、なんて会話をよく聞きますが、その山というものを見るのに使えるのではないかと思うのです。
例えば、前半は読者減少率が大きいのに、作品のある区間を過ぎた先は減少率がゼロに近いところで横ばいになる、という場合です。
この場合は、ある時点、というのが面白くなり始めるところじゃないか、と推測できるわけです。
例えばドグラマグラとかはこんな感じ。
三分の一ぐらいまで読んだら、結構はまるのかなーと、まだ読んでいない僕でも想像することが出来るわけです。
最後になりますが、この2つのグラフは、管理人にとっても有益かもしれません。なぜなら、いずれ出てくるかもしれない不正操作の発見につながるかもしれないからです。
どちらのグラフも通常の場合に描くカーブは共通していますから、これらが明らかにぎこちないカタチをしている場合に怪しいかも、ということになります。
やっぱりグラフはいいですね。可視化すると想像が膨らむ……